2022/12/20 Healthcare Venture Knot 2022 開催報告③ Web3×ヘルスケアの実践
「医療者とヘルスケアベンチャーを繋ぐ」をコンセプトに、「Healthcare Venture Knot 2022」が、2022年11月19日デジタルハリウッド大学駿河台キャンパスにて開催されました。5回目となる本イベントは、医療者とビジネスパーソンが手を取り合い、医療現場の真のニーズを解決するヘルスケアビジネスを創造しようと、毎年イノベーティブな機運を高めるきっかけとなっています。今年は、テクノロジーを活用した現場の最前線についての2つのパネルディスカッションと、実践型起業家育成プログラム「Knot Program」に参加した5名の起業家によるピッチコンテストが行われました。会場・オンラインともにリアルなヘルスケア課題の実情に迫る声が寄せられ、新たな学びとさまざまな領域の方がつながり合う会となりました。本記事では、第三部「Web3×ヘルスケア」をテーマとしたパネルディスカッションの様子をお伝えします。
イベント情報
「Healthcare Venture Knot 2022」2022年11月19日(土)13:00〜17:30場所:デジタルハリウッド大学 駿河台キャンパス主催:株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ、オンラインコミュニティSHIP
※以下順不同、敬称略。登壇者のプロフィールはページ末に記載
オープニング
第一部:パネルディスカッション1 「在宅医療DXの実
第二部:実践型起業家育成プログラム「Knot Program」起業家5名によるビジネスピッチコンテスト
第三部:パネルディスカッション2 「Web3×ヘルスケア」
登壇者 ・JPYC株式会社代表取締役 岡部典孝
司会 ・株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ コミュニケーター 長瀬みなみ・株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ コミュニケーター 河村由実子
ピッチコンテストの表彰式
クロージング
第三部:「Web3×ヘルスケア」Web3が医療に躍進を
第三部では、ヘルスケア領域にWeb3の技術やコンセプトをいち早く導入し注目を集めている4名のゲストに、それぞれの実践状況について伺いました。Web3がヘルスケア業界にもたらす価値はどのようなところにあるのか。来場者やオンライン視聴者からも活発な質問を受け、和気あいあいとしたディスカッションが繰り広げられました。
Web3を活用することにしたワケ
まずはWeb3をヘルスケア領域で活用することにした理由をお聞きしました。JPYC株式会社の岡部氏は、「歩くことでポイントやアイテムを得られるゲームが流行した際、ゲーム会社が暗号資産を活用すれば、何度もインセンティブをもらう仕組みを作れ、毎日歩くメリットをより実感し、行動変容が可能となると思いました」と、人間の欲求を満たす暗号資産の取り組みを語りました。株式会社WAVE3の近藤氏は、「福祉業界がWebに対応できていない状況に危機感を持ちました。それと同時にWeb2さらにWeb3が実装されれば、他者との関わりに難しさを抱える障害者の就労の選択肢が広がるのではないかと思いました」とターニングポイントとなった背景を説明しました。
DAO(分散型自律組織)技術を用いた医療者コミュニティMedicalDAOのファウンダーを務める木村氏は、「患者と医者のパワーバランスの不均衡に疑問を持ちました。患者情報は個人情報であるにも関わらず医療者が所有しているのが現状です」と課題感を述べました。また、Web3の技術基盤であるブロックチェーンを用いれば、「患者自身が健康情報を所有し、インセンティブを得られる仕組みが作れることに面白味を感じました」とWeb3の魅力についても語りました。株式会社メプラジャパンの佐藤氏は、「Web2までのシステムで難渋した医療課題をWeb3の導入によって解決できるのではないか」と語ります。佐藤氏が携わるアジアの新興国では、貧富の差によって治療が受けられない人が大勢います。また、医療保険制度が整備されていないため、Web2までの中央集権的な技術では対応しきれません。「Web3における情報を個人が所有する仕組みは新しいインセンティブ設計を可能にすると感じました」と、今後の明るい未来について語られました。
ヘルスケア領域にWeb3導入を進めるには
現地会場やオンライン会場からは、Web3と並列されるメタバースについて、また、日本のヘルスケア領域にWeb3が導入されるためにはどのように進めていけばよいのかなどの質問があがりました。最後に、「まずはWeb3に触れてみましょう」という提案があり、岡部氏や佐藤氏からは「実際にMetaMaskなどのウォレットをダウンロードし活用してみるなど、手近なところからはじめることをおすすめします」と伝えられました。近藤氏と木村氏は「まだヘルスケアでWeb3を活用している事業者は少ないので、見切り発車でもとりあえず始めていくと理解が深まるし、パイオニアになれます」と語りました。
まとめ
本稿では、「Healthcare Venture Knot 2022」の第三部のパネルディスカッションの様子をお伝えしました。さまざまな分野の専門家たちが垣根を越えて意見を交え、各人がヘルスケアビジネスのネクストステップを想像した貴重な機会となりました。「何のためにその技術を用いるのか」、ヘルスケアビジネスの本質を捉えながら業界全体の明るい未来を皆さんとともに描いていきたいと思います。イベントにご参加いただきました皆様、ありがとうございました。<関連記事>・報告① 在宅医療DXの実践・報告② Knot Program参加者によるピッチコンテスト
登壇者プロフィール
【第三部:パネルディスカッション2 「Web3×ヘルスケア」】岡部典孝(JPYC株式会社代表取締役)
2001年一橋大学在学中に有限会社(現株式会社)リアルアンリアルを創業、代表取締役/取締役CTO等経て取締役に就任。2017年リアルワールドゲームス株式会社を共同創業、取締役CTO/CFOを経て取締役に就任。歩くことでもらえる「ARUKコイン」担当。2019年日本暗号資産市場株式会社(現JPYC株式会社)を創業、代表取締役に就任。2021年iU情報経営イノベーション専門職大学の客員教授、一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)理事。
近藤貴司(株式会社WAVE3代表取締役社長)
元イタリア料理シェフ。【Web3のチカラで、障害福祉の”今まで”を変える】をモットーに、東京都板橋区にて都内発業態となるWebワーク特化型の障害者就労継続支援B型事業所「GIF-TECH’s」を開設。国内最大手ブロックチェーンメディア「CoinPost」とのジョイントベンチャーであるWAVE3株式会社を創業。障害者就労支援×Web3の社会実装を推し進めると共に、様々なWebワークを実践を経ながら体得できる障害者施設を拡げるべく活動中。
木村朱門(MedicalDAOファウンダー)
医療ブロックチェーンに大きな可能性を感じ、株式会社hashPeakで働く傍ら自らもMedicalDAOを創設。「ミライの医療をつくる」をビジョンに開始3ヶ月で600名の医療従事者が参加。その他、医療ブロックチェーン協会の代表理事や医療AI系プロジェクトも進めている。MIRAI一期生優秀修了生、聖マリアンナ医科大学医学部医学科6年。
佐藤創(株式会社メプラジャパン代表取締役)
大学在学中に教育系NPO法人を設立し理事長就任。コンサルティングベンチャー取締役、医療法人の経営企画室勤務を経て、株式会社メプラジャパンを創業。2012年にカンボジアに移住し、日系病院設立などを支援。2017年より、東南アジアの国々を飛び回りながら各国の医療機関・スタートアップ・投資家との協業を推進。これまで代表として 3社創業、数社の役員・顧問を歴任。現在は、Day 1 からグローバルでWeb3 プロジェクト(DeSci:分散型サイエンス領域)に挑戦中。シンガポールで法人設立予定。
【取材・文=川村みさと、撮影=ひろし】