2024/8/30 「実践者が語るインパクト投資~東京ウェルネスインパクトファンド の社会課題解決~」開催報告

 7月31日(水)、ウェルネス領域の課題解決をテーマにインパクト投資を実践するメンバーでトークイベントを開催しました。今回は、東京ウェルネスインパクトファンド(以下、TWIF)初のインパクトレポート発行を記念し、投資先に伴走支援を行っているキャピタルメディカ・ベンチャーズの後町陽子、若手キャピタリストとして投資支援に関わるマネックスベンチャーズの西河佑夏、出資者としてファンドをご支援いただいている三井住友信託銀行の真田みぎわ氏、日本総合研究所創発戦略センター/CMV インパクトオフィサーの橋爪麻紀子氏が、TWIFが何を目指して、どのようなインパクト投資・起業家支援を行っているのかについてお話するとともに、ファンド活動として昨年制作した「女性のウェルネス課題デザインマップ」についても紹介しました。
冒頭に後町からTWIFの経緯や概要を説明した後、以下の3つのテーマについて参加者が議論を交わしました。

ディスカッションテーマ①東京ウェルネスインパクトファンドへの想い

真田:弊社は「将来世代を含むすべての人のウェルビーイング向上」をテーマの一つとしてインパクト投資活動を行っていますが、その実現に向けてはウェルネス領域の課題解決は必要不可欠だと考えています。その点、東京ウェルネスインパクトファンドは、キャピタルメディカ・ベンチャーズが長年培ってきたヘルスケア領域でのインパクト投資経験をもとに、ウェルネス領域に特化した形でIMM体制が構築されている点に独自性があります。ウェルネス領域のアーリーステージのスタートアップに対し、リード投資家として、IMMの実践を伴走支援しながら、事業成長とインパクト創出の両立を目指すという東京ウェルネスインパクトファンドのコンセプトに非常に共感しています。
後町:CMVの強みであるヘルスケア領域の投資支援を見てくださっていたのは大変ありがたいです。

ディスカッションテーマ②IMM実践の工夫

橋爪:TWIFの特徴は様々なインパクト計測・マネジメント(以下、IMM)の実践にあると思いますが、工夫した点や、苦労した点について教えてください。
西河:2023年の夏前にインターン生としてジョインしたのが東京ウェルネスインパクトファンドとの出会いでした。投資実行まで進めるにあたり、私自身が持っている言語化能力は、インパクト投資の関係者や起業家に貢献できる強みだと思っていましたが、それをさらに高めることには苦労することもありました。言語化能力のカギはインプットの多さではなく、それを関連付けたり解釈する部分にあると思いますが、ロジックモデルの作成において、起業家が頭の中に描いていることをうまく引き出しながら自分の頭にあるものと結び付け、「これってこういうことですよね?」と言語化することが難しかったポイントです。
橋爪:今回は女性メンバーでのトークイベントになっていますが、女性のキャピタリストは業界としてまだ少ない現状があります。西河さんのお話のような経験談を広めていくことで、女性キャピタリストがもっと増えるとよいですね。
橋爪:TWIFでは、ウェルネス領域において女性を取り巻く課題にはどのようなものがあるのかを可視化する「女性のウェルネス課題デザインマップ」を有識者の方々と一緒に作りましたが、制作にかけた想いや制作にまつわるエピソードを教えてください。
女性のウェルネス課題デザインマップ
女性のウェルネス課題デザインマップ
 
後町:課題デザインマップ制作の目的は、投資対象領域における課題の構造がどのようになっているのかを明らかにすることですが、女性のウェルネスは具体的な因果関係や解決の糸口がまだまだ可視化されていないことからテーマとして選びました。制作した結果、女性のウェルネスには多くの課題が存在しており、それぞれの課題が複雑につながっていることが認識できました。
西河:有識者とのワークショップでは、参加者みなさんがそれぞれ抱えている課題をどんどん発言してくださっていました。女性の課題はなかなか人に言いづらい内容もあるのですが、そういった潜在している課題を共有し、共感し、まとめて発信することはとても意義深いことだと思いましたし、このような場に参加できて私自身も楽しかったです。女性だけでなく男性の方にも理解してもらえるようなマップになっているのではないかと思います。
真田:日本国内では投資家も起業家もまだまだ女性が少なく、女性の課題を解決しづらい状況にある中、課題デザインマップの取り組みはとても良いものだと感じています。課題デザインマップを見て、私自身が子育てしながら感じているモヤモヤが言語化されていることに共感しました。また、更年期にどのようなことが起きるか、私自身が初めて知ることも多くあり、性別を問わず女性の課題の認知度の低さに改めて気づかされました。社内の男性からは、「女性特有の課題は想像していたより深い」という感想もありました。
後町:女性の課題は自分が体験していないと女性自身もなかなか知ることがないというのは、私自身も発見でした。世代によっても異なるので、いろいろな観点からとらえることも重要だと気付きました。
この女性の課題デザインマップの中にも記載している更年期の分野で課題解決に取り組む株式会社menopeer(メノピア)さんに、このたびご出資をさせていただきました。menopeerさんには課題デザインマップの制作にも協力いただき、課題の解像度を上げる意味でも大きく尽力いただきましたし、認識している課題と目指す世界の認識が一致したことが出資につながりました。
橋爪:マップを作るだけでなく、1年後に投資につながっている点が重要ですね。マップという素地があったことで課題の解像度が明確になり、投資に至ったのですね。

ディスカッションテーマ③東京ウェルネスインパクトファンドのこれから

橋爪:ファンドクローズは9月末となりますが、ファンドへの期待や今後への意気込みについて教えてください。
真田:ウェルネス領域で課題解決の好事例をたくさん作っていただきたいと思います。投資対象となっている4領域のうち、ソーシャル/エコノミーとケアにおけるインパクト投資の実例が、日本国内ではまだ少ない印象があります。自治体との関わりも深い分野であり、東京都がLP投資家である東京ウェルネスインパクトファンドならではの目利きや投資活動ができるのではと期待しています。また、国内のインパクト投資が黎明期にある中で、対外発信に力を入れられている点も素晴らしいと感じています。ぜひ引き続き、IMMの取り組みを積極的に対外発信していただきたいと思います。インパクト投資は社会を変えられると信じていますので、インパクト投資の普及・拡大に向け、弊社も一緒になって業界全体を盛り上げていきたいと思います。
西河:真田さんのおっしゃっているケアやソーシャル/エコノミーは、私も大変注目しています。特に関心があるのは孤独で、社会からはまだ注目されていませんが、社会的孤独が原因で生活習慣病や心の病になってしまった人を実体験として見てきましたし、どの世代にも起こりうる社会課題として自分事にも感じています。私たちはIMMの「マネジメント」の部分を大事にしており、既存の投資先のサポートに入る中で、失敗事例や好事例を多く目にしています。そうした経験を新規投資にも生かし、新規投資と既存の投資先のサポートの両輪で解決に取り組めるのではないかと思います。
後町:日々の取り組みとしては、投資先の事業が成長して、アウトカムが必要なところに届くようにしたいと思います。それに加えて、インパクト投資やインパクトビジネスはまだまだこれから作り上げていかなければいけない段階なので、仲間を増やすために発信をしていきたいと思います。
 
【東京ウェルネスインパクトファンド インパクトレポートについて】
2019年に国内VC初のインパクトレポートを発刊して以来、毎年ファンドごとにインパクトレポートを発行してきたキャピタルメディカ・ベンチャーズの知見とノウハウを生かし、TWIFとして初となるインパクトレポートです。当レポートでは、ファンドの目標達成に向けた道筋やKPIとその実績を公表しています。
また、投資先企業の紹介ページにおいても、それぞれの企業の取り組むTheory of Problem (ToP)とTheory of Change (ToC)、ロジックモデル、インパクトKPIとその実績について開示したほか、1年間で生み出した社会インパクトとTWIFキャピタリストの1年間の伴走支援についてすべての起業家と、出資者の皆様からもファンドへの期待についてメッセージをいただきました。
東京ウェルネスインパクトファンド2023 インパクトレポート
ダウンロードURL:https://x.gd/23Xjb
(掲載ページURL:https://capitalmedicaventures.com/report
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