2023/8/2 「インパクトスタートアップ的ロジックモデルの作り方」を開催しました

 キャピタルメディカ・ベンチャーズ(CMV)は、ヘルスケア・ニューフロンティア・ファンド インパクトレポート2022発刊を記念して、介護業界の社会課題解決を目指すRehab for JAPAN 代表の大久保亮さんをお招きし、CMV代表青木とのトークセッションを7月6日に開催しました。創業初期だった5年前からRehab for JAPANのロジックモデルを作ってきた2人が、事業の成長と共にロジックモデルをどう進化させてきたか、そのプロセスで考えてきたことを語りました。この記事ではトークセッションの様子をレポートします。

ロジックモデルを作ることは、スタートアップにメリットがあるか?

 トークセッションは「ロジックモデルモデルを作ることはスタートアップにとってメリットがあるのか?」という本質的な問いを大久保さんに投げかけるところからスタートしました。
大久保:社会的インパクトの創出を目指すスタートアップ企業は、事業の成長と社会課題解決を同時に目指していくインパクトスタートアップにとって、ロジックモデルは「山登り」をイメージするとわかりやすいと思います。「どんな事業をどんな軸で実現していくのか。」これを「どの山をどんな風に登るのか」「今何合目で、振り返ってみてどうなのか」「登り方は予定通りか?遅れや問題はないのか」このようなことを検討・振り返り煤際の相互理解を投資家や社内メンバーなど様々なステークホルダーと行う時に、ロジックモデルは役立ちます。
青木:まさに、ロジックモデルはビジョン実現に向けて社内・外に「どんな登り方でやっていくのか」を可視化した、コミュニケーションツールですよね。
スタートアップにおススメのロジックモデル作成メソッドとは?
出典:文科省が発信したロジックモデル作成のガイドラインより抜粋https://www.mext.go.jp/content/20230410-mxt_kanseisk01-100000155-3.pdf
青木:少し前に文科省から発表されロジックモデル作成のガイドラインによると、ロジックモデルの作成手法には主に2つのアプローチがあります。1つは「問題深掘り型」です。これは生じている問題の原因を深掘りし、解決すべき課題を特定した上で、最適な解決手法を検討する思考手順です。解決したい課題に対して、網羅的に問題構造を把握していくアプローチで、一般的には新規で政策課題を探索・吟味する場合に適していると言われています。
青木:もう1つの「仮説思考型」と呼ばれる手法は、「あるべき姿」と「現状」とのギャップを特定した上で、「あるべき姿」から逆算して実現すべき状況を検討する思考手順です。こちらは一般的に、政策課題や政策方針・あるべき姿等について、すでに議論がなされている場合に適していると言われています。スタートアップ企業には後者の「仮説思考型」を推奨しています。冒頭で出た山登りの例えでいうと、「登り方には色々選択肢があるが、自分達はこの登り方でいくよ」という強みを活かしていく手法が、リソースマネージメントの観点でも理にかなっていると思います。
出典:文科省が発信したロジックモデル作成のガイドラインより抜粋
https://www.mext.go.jp/content/20230410-mxt_kanseisk01-100000155-3.pdf
青木:また、ここで混同しやすいのが「アウトプット」と「アウトカム」の違いで、アウトプットは「当該企業・団体が提供する技術、商品、サービス」で、実際に世に送り出した成果物そのもの、アウトカムは「アウトプットによって生じた有形無形のポジティブな変化」を指し、成果物がもたらした結果と考えます。そのKPIを短期・中期・長期とフェーズごとに振り返り、時には軌道修正することが大事です。

事業成長とともにロジックモデルはどう変化していったのか?

Rehab for JAPANの2018年当時の最初のロジックモデル】
青木:このロジックモデルは創業初期(Rehab for JAPANの創業は2016年6月)のものだけど、当初から長期アウトカムである「健康寿命の延伸」を目指して、仮説思考的に考えはじめたの?
大久保:いやそれが、、、漠とした夢として「健康寿命の延伸」を思い描いていたものの、僕のケイパビリティとして実際にリハビリ資格を持っていて業界の課題を認識していること、また診療報酬の改定のような外部環境の影響から、実際は足元のデイサービスさんに、リハプランを提供することから考えはじめました。
青木:それって現実っぽいよね。あるべき姿から逆算して考える「仮説思考」がスタートアップにおすすめと言ったけど、これはこれでスタートアップっぽいというか。
大久保さん:はい(笑)。業界のどの課題に対してどうソリューションを提供するかは定義していて、その中で自分たちができるケイパビリティは何なのか、POCをきちんとやっていく、さらにブラッシュアップしていくことに注力していましたね。
青木:目の前のお客さんがどんないいベネフィットをもらえるのか、デイサービスの人たちがどうやったら利用者さんの健康寿命の延伸をさせられるのか、そこをずっと考えていた感じですよね。それが「自分達がやっている意味だ」なんて語っていた記憶がありますね。そしてこれが2021年までの変遷です。増えたよねー。その要因って何だと思われますか?
【Rehab for JAPANの2018〜2021年までのロジックモデルの変遷】
大久保:増えましたね(笑)。要因として、資金調達の影響は大きかったです。それにより組織編成含め、僕たちのケイパビリティが増えたのは事実です。
また、提供すればするほど新たな課題が見えていき、それに対するソリューションも増え、さらにマーケットから求められたという側面もあります。よく言う7・2・1というか、主力事業となっている7があってそれに付帯するような形の2があり、新規の1といったような形で増えていき、それぞれのアウトカムを誠実に考えていった結果と言えるかもしれないです。
青木:やれることが増えていったと同時に、マーケットに対する解像度があがってきたことで、中期アウトカムに対する解像度もあがり、それが逆にアウトカムとアウトプットの違いが不明瞭になってしまった問題がありましたよね。それが今回の2022版ではかなり整理できていると思います。「1つのアウトプットにより短期アウトカムが創出された先に、中期アウトカムが自動的出てくることはないので、アウトプットはアウトカムへの介入行為だ」と定義づけることが必要だったんですよね。1つのアウトカムの先の矢印を次の段階にどうつなげるかを検討した結果、どんどんアウトプットが増え、そのそれぞれをアウトカムに対する介入として位置付けていったんですよね。
【Rehab for JAPANの2022年時点のロジックモデル】
大久保:そのあたりが青木さんに最も助けられたところです。
ここに至るまでに、ぶっちゃけトークで言うと(笑)、僕としてはなるべくシンプルに、数字で測れないものは載せない!という感じでやりたかったんです。とはいえ冒頭で話したステークホルダーとの相互理解をきちんとしたい思いも強くありました。そうすると、客観的に説明しようとすればするほどどうしても複雑になってしまったんです。
それを青木さんからの提案で「介入」というキーワードでまとめることで、成立させることができました。

スタートアップのロジックモデル作成で大切な3つのポイント

青木:ではそろそろまとめに入っていきたいと思いますが、スタートアップがロジックモデルを作るときに大切なポイントは、1)顧客のライン、2)アウトプットとアウトカム、3)バックキャスティングとフォーキャスティング、この3つがあると思っています。
まず顧客のラインですが、Rehabのケースでもかなり意識しています。横のラインで、Rehabが実現したい未来に対してどうターゲット顧客に行動変容してもらうかを表現しています。
それは介護事業者や介護スタッフといったメイン顧客だけではなく、例えば実現したい未来に対して国の変容を求める必要があるのであれば、それも表現します。
また、先ほど「介入」というキーワードで話したとおり、アウトプットは企業が提供するもの・こと、アウトカムは顧客の行動変容、そしてその変容から得られる便益として考えるのが、2つめのポイントです。
3つ目として、長期アウトカムからバックキャスティングして中期、初期と落とし込むのが理想ですが、正直最初の段階では中期アウトカムは初期と長期の間を取るというような方法でも差し支えないと思います。
現実的な手法として、長期アウトカムからバックキャスティングしつつ、今のプロダクトが顧客にどのような行動変化をさせるのかというのをフォーキャスティングするというのを行ったり来たりしながら、山の登り方のロジックを磨いていくというのがおすすめです。
 
青木:最後に実際に作る時にじゃあどこから考えていくの?という観点をお伝えすると、1)達成したいこと(セオリーオオブチェンジ)のイメージをして、2)まず取り組む足元のアウトカム(課題&ソリューション)を考え、3)その中間地点(長期目標のために想定されるマイルストーン)をイメージし、4)長期アウトカムを言語化する、この順番をおすすめします。考える時間軸の考慮も必要ですし、フェーズごとのKPIがとても重要です。
 
まとめ
 今回のイベントでは、Rehab for JAPANのロジックモデルを作ってきた過程をご紹介し、作るメリット、ロジックモデルの変遷と事業の成長、作成のポイント・順番など、かなり詳細にお話ししました。
 インパクト投資に関心のあるさまざまな背景の起業家のみなさんや投資家の方などが参加し、たくさんの質問も寄せられました。
CMVでは今後もトークイベントや、毎月の三日月の夜にインパクトナイトと称して、インパクト投資やCMVの仕事に興味があるイベントを開催していますのでぜひお越しください!CMVで一緒に働いてくれる方も大募集中です。
この記事をみてもっと詳しく話を聞きたい!と思ってくださった方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)