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医療・介護・福祉領域の起業応援コミュニティHEAPの課題解決プラン発表会を開催しました

株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ(以下、CMV)は2月15日、医療・介護・福祉領域の課題解決に取り組む起業家応援コミュニティ『HEAP』の最終発表会を開催しました。HEAPは東京都の『多様な主体によるスタートアップ支援展開事業(TOKYO SUTEAM)』に採択され、1年間にわたるプログラムを実施。参加者120名の中から選抜された5名が、医療・介護・福祉分野での起業に向けた最終発表を行いました。プログラムでは、月1回の講義やCMVメンバーとの個別相談会、起業家との対話機会の提供、オンラインでの情報交換など、多角的な支援を展開してきました。
【最終発表会の審査員】
- 石井洋介:株式会社omniheal代表取締役/おうちの診療所中野院長
- 橋本典子:Animo株式会社代表取締役
- 猿渡由実子:NPO法人ETIC.シニアコーディネーター
- 糟谷明範:株式会社シンクハピネス代表取締役/一般社団法人CancerX共同代表理事
- 青木武士:株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ代表取締役
▼現場の課題から生まれたソリューション
トップバッターを務めた桜田千江里さんは、「支援者ケアを常識に」をミッションに掲げ、福祉スタッフの心を支える定着支援サービスを発表しました。福祉業界の精神疾患による労災請求が全職種中で最も多い現状に着目し、対人支援特有のストレスケア、定着支援プログラム『helpwell』を提案。3年間の放課後等デイサービスでの支援員経験から、貴重な人材のメンタルヘルス悪化による離職という課題に向き合い、スタッフと管理職双方への研修プログラムを通じて職場環境の改善を目指す取り組みを紹介。特に感情労働の特性を考慮したケアの重要性を強調し、全国12地域での実証実験の成果も示しました。
続いて発表した藤原力丸さんは、「介護の課題は他人事ではない」という強いメッセージとともに、在宅介護を行う家族の負担軽減を目指すサービス『Care Hub』を提案しました。2030年には約420万人に達すると予測される仕事と介護の両立者に向けて、相談窓口となり課題整理と解決策を提示するプラットフォームの構築を計画。理学療法士としての経験を活かし、特に自費サービスの活用促進による多様なニーズへの対応を重視しています。世田谷区での実証実験を起点に、都心部での展開を予定。実例として、離職寸前だった介護者の事例を挙げ、適切なサービス選択により月30時間の介護時間削減を実現した成果を示しました。
3番目の発表者、田村留美さんは、大人用紙おむつを利用する介護者・家族の負担軽減に焦点を当てた『ほっと排泄サポート』を発表しました。多くの高齢者が不適切なおむつ選択や使用方法により皮膚トラブルを抱え、安心安楽な生活を送れていない現状に着目。皮膚・排泄ケア認定看護師としての専門知識を活かした製品選択とケアの実践的サポートにより、この課題の解決を目指します。特に自治体のおむつ給付制度と連携したサービス展開や、専門家ネットワークの活用による継続的なサポート体制の構築が特徴です。全国に約2500人いる皮膚・排泄ケア認定看護師との連携も視野に入れた展開策も示されました。
4番目の発表者、千葉のどかさんは、便通改善に効果的な食事レコメンドとアドバイスを提供する『おなかおかん』を発表しました。東京科学大学生命理工学院での腸内細菌研究の知見を活かし、個人の腸内細菌データに基づいた食事提案と配食サービスを組み合わせたソリューションを提案。20代女性の58%が便通や便秘に悩んでいるというデータに着目し、科学的根拠に基づく食事デザインで解決を目指す点が特徴です。『基礎研究で、世界を変える』ピッチイベントにも採択され、2025年度の1年間で技術開発を進める予定。企業向けの商品開発コンサルティングと、個人向け配食サービスを組み合わせたビジネスモデルも提示されました。
最後の発表者、北島未菜さんは『障害と支援機器をつなぐ場 TOM JAPAN』を発表しました。障害当事者の個別ニーズに基づいた支援機器の開発・提供を目指すプラットフォームの構築を提案。医療、デザイン、工学の専門家チームによる支援機器開発と、3Dプリンター技術を活用した低コストでのカスタマイズ提供という革新的なアプローチを打ち出しています。「片麻痺で片手しか使えない方のジップロックコロープナー」など、具体的な開発事例も示し、「障害の有無に関わらず誰もが快適に過ごせる社会」の実現に向けた展望を描きました。
▼熱い想いが評価され3人が受賞、第2期開催への弾み
懇親会での結果発表では、最優秀賞に『障害と支援機器をつなぐ場 TOM JAPAN』の北島未菜さんが選ばれました。そして、社会課題解決特別賞には田村留美さん、ヘルスケア特別賞には藤原力丸さんが選出されました。受賞後、北島さんは「発表会直前までCMVやチームメンバーなど多くの方々に支えていただいて形にすることができました。必ずこのモデルを実行できるように頑張りたいと思います」と決意を述べました。
審査員の青木からは最後の講評で1年間の試行錯誤を重ねた5名の発表者に敬意を表しつつ、「マーケティングやセグメント化といった一般論ではなく、『目の前の1人を絶対に幸せにする』という強い想いこそが大切で、その想いが同じ課題を持つ多くの人々に響いていきます。医療・介護・福祉関係者が起業する意味もそこにあります」と、起業家としての心構えを説きました。
CMVはこの『HEAP』の第2期を2025年にも開催します。3月から4月にかけての参加者の募集を開始します。医療・介護・福祉分野での起業を目指す人材の育成を継続していく方針で、第1期で築いたノウハウと成果を活かし、より多くの社会課題解決に貢献する起業家の輩出を目指していきます。